税務調査を拒否できるか?

無予告調査に対する理由の開示を求めて、その回答がない限り、税務調査には応じない、などの対応はできるのか?
納税義務は分かるが、事前通知もなく、理由も開示せず調査されるのは納得ができない。
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結論は、どうしても都合が悪い場合は理由を告げて延期することは可能ですが、拒否することはできません。

実際の事案として、無予告調査の理由開示を書面で迫り、その回答がないままで調査を受けないとして課税要件を争った2018年10月21日の(非公開)裁決では、
○消費税の仕入税額控除を否認された
○青色の取消しを受けた(注1)
を争い、裁決で納税者が負けています。

結局のところ、国税は受忍義務違反(国税通則法第127条)の罰則規定を持ち出すことなく、帳簿が開示されないことから消費税の否認と青色取消ができてしまうのです。(注2)

税務調査の種類には大きく分けて「強制捜査」と「任意調査」があります。

強制捜査はいわゆるマルサとよばれる国税局査察部が担当し、裁判所の令状を得て行いますので強制力があり、拒否はできません。
もうひとつは任意調査で、ほとんどの税務調査がこちらに該当します。

しかし、任意調査も拒否はできません。

では、なぜ調査を拒否できないのでしょうか。

任意調査を拒否したらどうなる?
国税庁の職員には、必要があるときは、納税義務者に対して質問・検査等ができる質問検査権が与えられています。(注3)
つまり、税務職員には、必要に応じて税務調査を行う権利が法的に認められているのです。

それでは、実際に税務調査を拒否した場合はどうなるのでしょうか。
国税通則法128条では、以下のような場合には1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる旨が規定されています。

①税務職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

②税務職員要求に対して、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件を提示し、若しくは提出し、若しくは偽りの報告をした者

つまり、質問検査権に基づいた税務調査を拒否したり、嘘をついたり、正当な理由がなく帳簿等を見せなかった場合には、罰則の対象となります。

税務調査は「任意調査」ではありますが、実際はほぼ強制となります。
とはいえ、税務調査官のいうことをすべて聞く必要はありませんし、意図的な不正をしているようなことがなければ、過度に恐れることもありません。主張すべきことがあるならば、主張しましょう。

例えば、事業とは関係ないプライベートなものを見せて欲しいといわれた場合などは、なぜ見たいのか、その調査に関係があるのか、その理由を聞いてもよいのではないでしょうか。

税務調査の連絡があったら、顧問税理士等と必要な準備をして、落ち着いて臨みましょう。

税務調査に対して不安があるなど、お困りごとがございましたら税理士法人とおやままでお気軽にご相談ください。


とおやま ひでゆき


(注1)
青色申告の承認の取消し
法第127条第1項第1号に規定する帳簿書類の備付け、記録又は保存(以下「帳簿書類の備付け等」という。)とは、単に物理的に帳簿書類が存在することのみを意味するにとどまらず、これを税務職員に提示することを含むものである。2000年7月3日

(注2)
 2018.04.04
「税務調査の受忍義務違反は結局こうなる」納税者は38億円の支払い
なお、事前通知は2011年12月より

(注3)
 国税通則法第74条の2(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)
国税庁、国税局若しくは税務署(以下「国税庁等」という。)の当該職員は、法人税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類等を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる。


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