税務調査の現場はあまり語られることがない。
そもそも国税局は口が堅く、税金を取られた当事者も自分の恥になるから外へは漏れない。

通常の税務調査とは異なり、マルサは国家権力による捜査権があり、
いったん査察に入られ告発されると、ほぼ必ず起訴される。

 昇進昇級の基準も独特で、納税者である国民からすると納得がいかない面もある。
しかし、警察や一般の政府系の機関では対処できないような巨悪に対しても立ち向かえるのは
税に対する厳しい姿勢があるからだとも考えられる。

本書ではあまり公開されない脱税の手口、国税庁等の内部の事情や具体的な調査方法も紹介されている。

内容のいくつかをご紹介すると

国税局、税務署を合わせて200件前後の強制調査に着手して、
150件から160件を各地方検察庁に刑事告発している。

全国の国税局を統括している国税庁がまとめた10年度(10年4月~11年3月)の査察の
活動状況によると、強制調査に着手した件数は196件で、告発した件数は156件。
告発分の脱税額は約213億円で、1件あたりでは約1億3700万円。

独特の昇進制度
 昇進昇級の判断が行われるのは毎年春。
国税庁幹部は「調査によってどれだけの不正を見つけたか、中でも懲罰的な重加算税を
課すことができたかが評価のポイント」と話す。

新手の脱税の手口を発見した職員は、国税庁長官等から表彰されるご褒美がもらえることもある。

「リョウチョウ」(資料調査課)の実力
マスコミからミニマルサと呼ばれる料調は、税務署では対応できない大口で悪質な事案が仕事。

査察と違い令状がないので、任意調査になるが、かなり厳しくしつこい。
調査ごとに25人程度の大量の人員を投入し、企業はもちろん社長宅や銀行にも調査に行く。

調査は予告をしないことも多く、パソコンやCD-ROM等も調査対象とする。
料調の職員1人が見つけ出す所得の漏れは、査察職員の5倍から10倍に達する。
悪質な場合は査察部に連絡して告発する。




        泣く子も黙るマルサ。調査の前では遅い。
            パソコンもチェックしよう

(注1) 国税記者 実録マルサの世界
 (株)講談社 1,600円
【著書紹介】
田中周紀
1961年生まれ。上智大学文学部卒業、85年に共同通信社入社。
95年から国税当局を取材。
2000年にテレビ朝日へ転職「ニュースステーション」ディレクターを務め、06年から
再び国税当局を取材。

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