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公認会計士・税理士 遠山事務所  TEL 03-5386-1299


? 資金調達


 資金調達について、資本(株式)・借入の順に、失敗事例を挙げています。
特に資本は、実務において、今、最も脚光を浴びている分野の1つです。資金調達のいかんによって、会社は急成長し得るし、逆に倒産する場合もあり得ますから、慎重な判断が必要です。




1.第三者割当により増資を行ったら、経営権を支配されてしまった。
 A社長は、会社で取得した特許権をもとに、新たに情報通信事業に参入するため、多額の資金を必要としていた。そんな折、会合で知り合ったB氏は、事業に関心を示し、増資を快く引受けてくれた。増資後の持株比率はB氏が70%、A社長を含む既存の株主が30%となった。事業が軌道に乗るとまもなく、持株比率上経営権を支配したB氏によって、A社長及び腹心の取締役は解任されてしまった。
(ヒント)
 会社の基本的な運営方針は、最終的に株主総会(有限会社は社員総会)で決定されます。決議方法は多数決原理によりますので、持株比率の大きい株主の意見が強く支配します。
 第三者割当増資とは、株主以外の第三者に新株発行を行うことをいいますが(商法280ノ2)、これにより、株主の構成が変わり、持株比率が変化することになります。場合によっては、上記の例のように、経営権が奪われることすらあります。
 そこで、持株比率によりどの程度経営権が握られるか、おさえておきましょう。以下、何%の持株比率により、?〜?の権利を取得できるかを、○で示しています。
権  利 持 株 比 率 ( % )
1.0 3.0 33.4 50.1 66.7 97.1 99.1
 株主提案権
 帳簿閲覧権 ×
 特別決議否決権 × ×
 普通決議支配権 × × ×
 特別決議支配権 × × × ×
 帳簿閲覧拒否権 × × × × ×
 株主提案拒否権 × × × × × ×

      *詳細は省略しています。
      *有限会社の場合、帳簿閲覧権は10%。特別決議支配権は75%
      *主な普通決議事項
        イ、取締役.監査役選任  ロ、決算書類の承認
      *主な特別決議事項
        イ、定款変更 ロ、重要な営業譲渡 ハ、取締役解任(注) ニ、合併・解散
                  (注)平成18年施行の新会社法では普通決議事項に変わります。    


2.名義株主から株式の買取請求をされた。
会社設立当時、発起人が商法上7人必要だったため、親戚や知人に名義を貸してもらっていた。最近になって、その株主の権利を主張され、株式の買取請求をされた。
(ヒント)
名義株を放置しておくと後でトラブルの原因となるため、事実関係により真の所有者を特定しておかなければなりません。真実の株主であることを証明するために次のような書類をそろえておいてください。
?出資の元を証明する書類(預金通帳、借入明細)?名義株の確認書 ?贈与証書・贈与税申告書(贈与による名義変更の場合)?遺産分割協議書(相続による名義変更の場合)
名義変更がされているのに対価の支払が無い場合には、贈与として取り扱われます。年間1人110万円を超えると、贈与税がかかってきます(相法21の5)。名義株は放置せず、会計事務所に相談しましょう。


3.銀行借入と共に定期積金も積んでいるため、実質金利が高い。
 5千万円の銀行借入をしたが、そのうち1千万円は定期積金の積立を要求され、自由に使えない状態にある。
(ヒント)
銀行借入をすると、同時に定期預金や定期積金の積立も要求されることがあります。しかし、これらの定期性預金は借入の担保ともいうべきものですから、自由に使えるというわけではなく、会社にとっては死に金ともいえます。
この場合、表面上の金利(契約書上)より、実質的な金利負担(実質金利)が高くなっているので注意しましょう。以下の算式で求めることができます。
実質金利 =(支払利息−預金利息)÷(借入金−定期性預金)
上記の例で、借入金5千万円(年利3%)、定期預金1千万円(年利1%)とすると、
(5千万円×3%−1千万円×1%)÷(5千万円−1千万円)=3.5%
取引金融機関ごとに実質金利を計算して、自社の借入金の見直しをしてみましょう。


4.債務超過・赤字が2期以上続いてしまい、銀行からの融資が受けられなかった。
 前期決算の赤字を取り戻すべく、今期は新規開拓に奮闘し、再び赤字となってしまったものの、来期以降の展望は見えてきた。
しかし、銀行に事情を話して融資を申し込んだものの、あっさりと断られてしまった。
(ヒント)
2期以上連続で債務超過または赤字が続いてしまった場合は、金融庁が作成した金融検査マニュアルにおいて破綻懸念先として区分され、金融機関からの追加融資を受けにくいとされています。上記の例のように、実際には経営改善の見込がある場合でも、形式的に融資の対象から外されやすくなりますので注意しましょう。
もちろん、経営改善の見込がない場合には、法的な再建も含め、財務の抜本的な改革を弁護士や税理士に相談しましょう。


5.メインバンクは一つと決めていたのに、融資を打ち切られた。
メインバンクに対して過度に依存していたため、相対的に融資の利率も高かった。そのうちに、融資自体が打ち切られ、運転資金を確保することが出来ずに、倒産に追い込まれてしまった。
(ヒント)
メインバンクへの過度の依存は避け、複数の金融機関と取引を行えば、融資を断られた
ときのリスクを分散できます。場合によっては、条件の良い金利を引き出せる場合もあります。都市銀行、信用金庫、政府系金融機関等は、金利も営業スタイルも違います。それぞれの特徴を生かしましょう。


6.良くないと分かっているが、借入のための借入をしてしまった。
資金繰りが悪化したので、架空の使用目的で、金融機関から借入返済のための借入をしていた。しかし、まもなく融資を断られたため、高利貸から高金利な借入をするようになった。結局、多額の負債を抱え、そのまま倒産してしまった。
(ヒント)
倒産した社長に「事業撤退すべきだった時はいつか」のアンケートを取ると、「借入のための借入をした時」を挙げる社長が大変多いのです。経営計画を立てるのはもちろんですが、撤退基準(デッドライン)を作り、時間や金の上限を設け、引き際のタイミングを見極めて事業から撤退することも重要です。再起するためにも。


7.事業回復の見込がないのに、息子を連帯保証人にしてしまった。
借入返済額が多額であるにもかかわらず、事業回復の見込みはなく、利益の範囲で返済できる状況ではなかった。
銀行に追加融資を申し込むと、社長の息子を連帯保証人にすることを要求された。事業から撤退することに踏ん切りがつかず、事業承継の意思のない息子を連帯保証人にしてしまった。
(ヒント)
事業回復の見込みがない場合、きっぱりと撤退するのも、優れた経営判断です。ましてや事業承継の意思もない身内を借入返済のリスクに巻き込むことは、身内の一生を台無しにする可能性もあり、慎むべきでしょう。


8.日本の低金利で海外子会社に貸付けたら、現地金利を適用するよう、否認された。
海外子会社の資金調達の事例。親会社が日本の低金利で調達した資金を、その金利で海外子会社にUSドルで貸し付けた。
ところが、税務調査において、移転価格税制という税制が適用され、現地(海外)での調達金利を適用するよう修正された。不利な資金調達となり、痛い目にあった。
(ヒント)
移転価格税制のような、一般になじみのない税制には、落とし穴があります。上場会社等の大きな会社にのみ適用されるわけではないのです。海外進出する企業ならば、小さな会社であっても適用されるので、注意しましょう。
本事例の場合、業績不振の子会社を支援する目的等、一定の場合には移転価格税制は適用されません(事務運営要領2−6、法通9−4−2)。そこで、そのような場合には、業績不振・支援の事実を証明するような証拠を残しましょう。
また、円での貸付であれば、為替リスクを親会社は負わないので、移転価格税制は適用されません。
移転価格税制は、取引価格だけでなく、金利・リースなど、適用の幅が広くなっています。また課税処分も6年間まで行われます(措法66の4?)。会計事務所に相談するか、会計事務所を通じて国税庁に事前照会しましょう。


9.株を持っているのは社長だけだったので、社長死亡時に相続税が高額になった。
 元気だったオーナー社長が急死した。社長の相続財産の大半は自社の株式である。自社の業績が良かったため、想像以上に株式の評価額が高かった。
結局、相続税額が莫大になり、借金をしてまで支払うことになった。
(ヒント)
会社の業績が良いと、想像以上に株式の評価額が高くなるものです。オーナーが死亡した場合、株式の評価額が高いので、当然相続税は高額になります。その場合、相続税が払いきれない場合が出てきます。
そこで、相続税の事前対策として、オーナーが所有している株式数を減少させる対策と、株式の評価額を引き下げる対策例を挙げてみます。
?株式数を減少させる対策
後継者に株式を贈与します。年間110万円の非課税枠を利用しつつ、贈与税の実効税率が相続税の実効税率を下回る範囲内で贈与していきましょう。
?株式の評価額を引き下げる対策
純資産価額を引き下げるため、資産を圧縮するか負債を増加させます。また、類似業種比準価額を引き下げるため、配当,利益,純資産という3つの比準要素を低下させるようにします。


10.社長からの借入金が残っていて、社長死亡時に相続財産になってしまった。
 会社の資金繰りが悪いため、社長から借入れて資金を回していた。
社長が亡くなった時、会社から回収する当てもないのに、「会社に対する貸付金」として相続財産となってしまった。結果、多額の相続税を払うことになった。
(ヒント)
社長からの借入金があるということは、小さな会社ではよくある事例です。資金繰りのため社長が会社にお金を投入するといった事例から、経理が雑になっているため社長借入金勘定で合わせているような事例もあります。返済をしなくてよい借入金であり、実質的には資本金である、と言っても過言ではないでしょう。
しかし、社長から見れば、社長借入金は「貸付金」という債権ですから、社長が死亡した場合、この「貸付金」は相続財産となってしまいます。相続税法上、貸付金債権の評価額は債権額そのままとなります。よって、回収不能な貸付金を相続して相続税を支払う、といった悲惨なケースになり得ます。
一つの対策として、貸付金を現物出資して、資本金に振替える方法(デット・エクイティ・スワップ)が有効です。資本金(株式)に振り替えれば、事例9で述べた対策が打てることになります。
また、青色欠損金の範囲内で、貸付金の債権放棄をするのも社長借入が減り資本の部が改善するので、有効な選択肢の一つです。







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